文部科学省研究費 補助金・特定領域研究460
協奏機能触媒
2006-2009
Chemistry of Concerto Catalysis

均一・不均一系触媒化学の概念融合による協奏機能触媒の創成

研究背景

 触媒反応は、燃料や汎用石油化学品の製造あるいはファインケミカルズや医農薬品の製造中間体を合成するための必要不可欠な方法論であり、かつエネルギー、資源、環境といった地球規模での課題解決の有望な手段でもある。触媒化学は、いまや技術革新や社会基盤を支える学術である。これまでの触媒化学は、Ziegler-Natta触媒やWilkinson触媒の発見を契機に有機および有機金属化学を基礎とする均一系触媒と、Sabatierの金属化合物の触媒作用の発見やHaber-Boschの鉄触媒の開発に端を発する固体および固体表面化学を基礎とする不均一系触媒というそれぞれ個別の研究領域として発展してきた。わが国においても同様に、個別に発展してきているが、均一系触媒と不均一系触媒化学の研究水準はそれぞれ世界をリードする高いレベルにある。実際、均一系分子触媒である野依不斉触媒の発見に対するノーベル化学賞の授与はその事を如実に示している。さらに、不均一系触媒であるTiO2光触媒の発見も世界に誇る成果の代表例である。
しかし、高度文明を維持しつつ地球環境負荷を極力低減する科学・技術が強く求められる今日、このような社会のパラダイムシフトに対応するために、従前の単なる高度物質変換を基軸とする「ものづくり」に役立つ触媒化学は、社会と融和して複合的かつ学際的な学術に生まれ変わる必要がある。本特定領域研究では、「このような社会的要請にわれわれ化学者が真摯に対応して解決策を提供することが重大な使命である」との考えに立脚して、下に示す「協奏機能触媒化学」を推進することを提案する。
この「協奏機能触媒化学」は、均一系分子触媒や不均一系固体触媒、さらに生体機能を範とする生体機能模倣触媒の研究領域において、それぞれ個別に蓄積してきた英知を協奏的に融合し、これらをスパイラルアップして創出される未来型触媒の共通学術と定義する。すなわち、今日の社会の要請に応えるためには、これまでの踏襲型の触媒研究でなく、「研究領域の協奏的融合なくして革新的触媒開発がない」との認識が高まってきつつある。しかし、そのような機運が強くあるにもかかわらず、この「協奏機能触媒化学」を創出するための共通の学術基盤が必ずしも確立されていないのが現状である。
期せずして、固体触媒反応として発見されたオレフィンメタセシスの触媒機構の解明と重要中間体であるカルベン錯体の有機合成への展開に貢献したとしてGrubbsおよびSchrock両教授と、その機構の提唱者であるChauvin博士に、2005年ノーベル化学賞が授与されることが発表された。まさに固体触媒化学と分子触媒化学の「協奏的融合の結実」といえる成果である。本特定領域では、分子触媒や固体触媒および生体模倣触媒化学のそれぞれの触媒化学の概念を原子・分子レベルで電子構造論や立体構造論と速度論とに立脚して、協奏的に融合によって創成される「協奏機能触媒化学」の統一概念の確立をめざすとともに、その基盤に基づく分子変換システムの構築と安全で環境に負荷をかけない次世代ものづくりの技術基盤の確立をめざす。結果として、わが国が誇る野依触媒やGrubbs, Schrock触媒を超える未来型触媒を発見する。


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